かつて多くの蛍が飛び交い、
自然に溢れた美しき村「花鶏あとり」。
盲目の青年・灰羽はいばねは、花鶏に住む義眼医の男・漆黒しっこくに会う為、旅をしていた。
背中に停電した蛍の少女・ネムを乗せて。

千匹の蛍と契約し不死の肉体を得た漆黒しっこくは、
今も尚、柩ひつぎ・橘たちばなという二匹の蛍と生活を共にしながらも、
「蛍を愛せない」と笑う。
そして「自分の命が尽き果てても、蛍を助けたい」と懇願する灰羽はいばねに興味を持ち、
「灯屋あかりや」の運び屋として迎え入れることになった。

花鶏あとりでの生活が始まって一ヶ月。西の高台から花火を打ち上げ、
花鶏あとりに梅雨明けを知らせる「出梅の夜」と呼ばれる行事の主賓を
半ば強引に押し付けられた灰羽はいばねは、
雨の中、ネムを連れ西の高台を目指すことに。
しかし、そこで待ち受けていたものとは…？

──灰羽はいばねとネムの最後の夏が
今、幕を開ける。